学問偽装の犯罪


(社)心学明誠舎理事  大塚 融 


 「金融工学」というのが学問に値するのかわかりもしないのに、ノーベル賞をもらったというだけで、「金融工学」を使って開発されたことを錦の御旗にデリバティブやサブプライムを世界中に喧伝し、商品の内容がわからないままにただ格付け会社が第一級の商品としてお墨付けをしたことだけを信じて、世界中の金融業者がこの詐欺商品に手を出し、途方もない社会不安を生み出した。誰がこの詐欺学問にノーベル賞を与えたのか、明らかにすべきであろう。詐欺にお墨付きを与えたことは犯罪だからである。学問を偽装したものに、学問の名誉を与えることの極めて危険なことを「金融工学」は示している。

 それとまさに同じ誤りが、DNA鑑定の初期の利用にあったことは、「学問とはなにか」を絶えず検証することの必要を教えている。DNAの「学問」としての「位置づけ」の知識もないのにひたすら「科学」を錦の御旗に再鑑定を拒んだこの事件についての最高裁判事までのすべての司法関係者は、実名で報道されるべきである。その無知さ加減の審判を国民に委ねるべきである。「生兵法は怪我のもと」であるように、「学問」に対する疑心をもつことこそほんとうに学問を知る者であろう。

9年前の藤村新一の石器捏造事件でも「学問とはなにか」がテーマだったが、この世の中で「学問」と称するものをまず疑い、たとえ真実らしくても「学問」の「位置づけ」ができているかを疑い、「学問」を利用する手合いがそれを使いこなす能力を持ち合わせているかを疑うことこそ、大学における基礎訓練として教え込むべきであろう。このことを教えることのできる学者が我が国で一体何人いるだろうか。

 

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